北九州芸術劇場 「リバダン!」制作担当者インタビュー

2014年05月03日
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北九州芸術劇場

北九州市小倉北区にある複合商業施設・リバーウォーク北九州にある北九州市立の劇場。2003年にオープンし、昨年で10周年。大・中・小3つの劇場と、創造工房、芸術文化情報センターを有し、創る・育つ・観る、の3つのミッションに基づき、様々な事業を展開。“旬”の舞台作品を幅広く招聘する他、劇場が自ら演劇作品を制作するプロデュース公演や、アーティストを地域に派遣するアウトリーチ活動など、芸術文化が根付き、人々が生き生きと暮らす、創造的なまちづくりへの役割を担う。


sakata北九州芸術劇場 舞台事業課 坂田雄平インタビュー

 

リバーウォーク北九州のオリジナルダンス「リバダン!」は「地域のアートレパートリー創造事業」の第一弾として行われました。そもそもこの事業が始まったきっかけは?

 

直接のきっかけは、昨年行った「アーティスト往来」という事業の中で、伊藤キムさんの振付けで地元企業の安川電機のダンスを創作したことです。その経験から、企業でダンスをつくることが職場内のコミュニケーションの活性化に繋がり、企業の特性を反映させることで、オリジナル性の高い作品ができることが分かりました。北九州芸術劇場はオープン前から、アーティストと劇場の外で様々な出会いの場を作るアウトリーチを行ってきましたが、次の10年に向け、こうした活動を事業終了後も長く地域に残す仕組みとして考えられたのが「地域のアートレパートリー創造事業」です。安川電機では創作したダンスを企業のお祭りで披露するのみでしたが、これを企業側も長く活用できるコンテンツとして創作・定着させられないかと、今回「リバダン!」を企画しました。

 

パートナーにリバーウォーク北九州を選んだ理由は?

 

劇場が外に出る際、これまでは劇場から企業や団体に「お願い」することが多かったのですが、この事業では、劇場と対等な立場で創作に関わり、楽しんでくれる組織や団体とパートナーを組むことが大切になります。リバーウォーク北九州は、北九州芸術劇場を含む多くの施設や店舗が入る複合施設で、昨年、劇場と共に10周年を迎えました。これまで一緒に歩んできた仲間として、作品づくりに挑戦しませんか、とお声がけした所「ぜひ」となった次第です。

 

アーティストに近藤良平さんを選んだ理由は?

 

アーティストの選択はリバーウォーク北九州の担当者と一緒に行いました。近藤さんはこれまでも、様々な地域でそこに住む方と創作をされています。また、多様な人々が働く複合施設という、リバーウォーク北九州の特徴も考慮し、サラリーマンからショップの方まで、広く顔を知られている方が良いだろう、ということで近藤さんにお願いすることとなりました。

 

地域での創作にアーティストが参加する意義をどうお考えですか?

 

劇場で創る作品であれ、地域で創る作品であれ、事業がアーティストに創造的な刺激を与えることができるかを常に考えています。東京を拠点に活動するアーティストにとっては、地域での創作を通し北九州固有のものに出会うことは刺激になるでしょうし、大型複合施設との創作も貴重な経験になると思います。

 

リバダンの創作に関して、近藤さんにどういったオーダーをしましたか?

 

「その場にいるみんなでつくってください」とお願いしました。近藤さんもそのつもりで、ワークショップでは参加者の意見をどんどん取り入れていきました。作品づくりも含めて1時間半で、その場にいた約60人が踊れるようになったので、「誰でも踊れる」という観点からも理想的な作品になったと思います。ただワークショップに参加できず振付けの動画で練習した方からは「難しい」という意見も出ましたが。

 

創作を通して、どういった成果が得られたと思いますか?

 

施設内で普段会う機会がない方と知り合えたことや、すれ違ったら挨拶をするようになったなど、今までになかったコミュニケーションが生まれたことは、成果だと思います。店舗ごとに勤務状況が異なるなか、最終的にたくさんの店舗や施設の方が参加して下さったのが嬉しかったですね。

 

パートナーであるリバーウォーク北九州とは、どのようにイメージを共有して事業を進めていったのですか

 

まず4月18日の10周年記念セレモニーで、ダンスのお披露目をすると決めて、それ以降は市のお祭りや劇場の事業の中で「リバダン!」を活用していくために、個々の催しでどのように見せるかを詰めました。例えば4月のセレモニーでは、式典中に突然踊りだすフラッシュモブ形式で、8月のお祭りではパレード形式、といった感じです。幸いなことに、リバーウォーク北九州の担当者とは、「リバダン!」を「イベントで終わらせない」ことや、焦らず長期的な視点で浸透させていくことなど、最初からイメージの共有ができていたので、非常に楽でした。劇場として気をつけたのは、この事業を相手の立場で見た時に、どうしたらモチベーションを高く持って取り組んでもらえるかということです。文化の専門機関としてのノウハウをきちんと示し、一緒にできることを話し合いながら本気になってもらう。その最初の過程でボタンの掛け違いがあると、後々ひずみが広がるのではないかと思います。

 

企業や施設と対等なパートナーシップを結ぶことの難しさもあると思いますが、今回どのような「対等さ」を求めましたか?

 

今回のような経済的な指標にのらない事業を行う際、商業施設側では予算確保がしにくいこともあります。 

今回はダンスの作品創作に必要な最低限の予算は劇場が持つようにしました。また、作品のクオリティや企画の実現性についても、専門機関としてノウハウを持つ劇場が責任を持つべきだと思います。今回、リバーウォーク北九州は対外的なPRや、入居施設や店舗への呼びかけ、実施に際しての施設利用に関して全面的に協力して下さいました。稽古の場にも管理事務所の方々がたくさん参加して下さり、可能な範囲の協力を惜しみなくして頂いたと思います。

 

3月の演劇フェスティバルでは「リバダン!」を一般の方と踊るフラッシュモブが行われました。企業や市民の方と、地域で作品をつくる意義とは何ですか

 

「リバダン!」のような市民の方と共有できるツールを持つことで、リバーウォーク北九州が、単に買い物をする場所ではなく「一緒に踊った店員さんのいるお店」という風に、より親しみを感じられる場所になるといいなと思います。普段アートに馴染みのない所にアートを定着させるのは劇場の役割でもありますし、パートナーとなる企業にとっては、創造性のある活動を通じて、社内の課題を改善できたり、地域コミュニティの活性化に貢献できる利点があります。文化やアートのいい所は、他の領域と競合せずに、経済の理念と離れて一緒に夢を見ることができる所だと思うので、劇場が10年かけてストックしてきたノウハウを活かし、企業や市民の方と一緒に固有の文化を生み出して、安心して住み、楽しく働ける、魅力的なまちづくりに繋げていけたら、と思います。

 

 

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