北九州芸術劇場 「そらダン」制作担当者インタビュー

2015年05月16日
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北九州芸術劇場

北九州市小倉北区にある複合商業施設・リバーウォーク北九州にある北九州市立の劇場。2003年にオープンし、昨年で10周年。大・中・小3つの劇場と、創造工房、芸術文化情報センターを有し、創る・育つ・観る、の3つのミッションに基づき、様々な事業を展開。“旬”の舞台作品を幅広く招聘する他、劇場が自ら演劇作品を制作するプロデュース公演や、アーティストを地域に派遣するアウトリーチ活動など、芸術文化が根付き、人々が生き生きと暮らす、創造的なまちづくりへの役割を担う。


IMG_4845★ 北九州芸術劇場 舞台事業課 村松薫インタビュー

 

2013年度に同事業として行われた「リバダン!」に引き続いて、2014年度の取り組みとなった「そらダン」。村松さんは「リバダン!」から関わっていたとのことですが…?

私は劇場側のダンスリーダーとして「リバダン!」に携わりました。自分自身、多少ダンス経験があるので、自主練習の音頭を取ったり振付を忘れた人に伝えたりする役割を担っていました。「リバダン!」ではリバーウォーク北九州内で働く社員や警備スタッフ、清掃スタッフ、支配人など様々な立場の人が参加していましたが、ダンスを通して参加者の距離がぐっと縮まるのを感じました。ダンスは言葉を使わずに身体1つで勝負するものなので、余計なモノ──肩書きとかいろんな事情を取り払った状態で人と人が向き合える。そこが魅力だと思います。今回の「そらダン」でも、そんな魅力を感じてもらえたらと思い、取り組んできました。

 

今回地域のパートナーとして地元に拠点を置く航空会社・スターフライヤーとタッグを組むことになったきっかけは?

地域のアートレパートリー創造事業では、ホームページなどで共同団体を公募するという形を取っています。スターフライヤーはもともと仕事上の接点が多かったので、この事業に興味を持って頂いたという経緯です。北九州が誇る企業の1つであるスターフライヤーとタッグを組むことで、企業と劇場それぞれの異なる顧客層・ファン層へのPRが相乗効果を生むのではという期待もありましたし、航空会社には機内モニターや安全ビデオなど創ったダンスを活用する場面がたくさんありそう!と妄想が膨らみました。

 

初回の打合せで社内の課題を伺ったところ、部署間の交流が難しいというお話がありました。パイロットや客室乗務員など専門職には異動が少なく、また早朝から深夜までをシフト制で勤務しているため、めったに顔を合わない社員も多いそうです。それから、社内全体の雰囲気を盛り上げるために、若手中心に取り組める何かを模索したいという希望も聞きました。ならば、若手を中心とし部署の垣根を越えてダンスを踊るというのはきっと効果的だなと感じました。

 

私たちが年間のプログラムとしてご提案したのは次の4つです。まずオリジナルダンスを創ること。出来上がったダンスを「わっしょい百万夏まつり」の企業パレードで発表すること。さらにプロモーションビデオ(以下PV)を制作し、ネットなどで広く発信すること。もう一つ、出来上がったダンスを今度は劇場で、市民の皆さんと一緒に踊るワークショップの機会を設けること。中でも「わっしょい百万夏まつり」の企業パレードは、スターフライヤーも、ただ練り歩くだけではない新しい試みを検討したいと考えていたそうで、ダンスならきっといいアピールになるだろう、と賛同していただきました。また、PVの制作と配信についても企業のパーソナリティをアピールする格好の機会になるという点で魅力を感じていただき、協働製作していく流れとなりました。

 

2014年度の取り組みとして、どのように進めて行かれたのでしょう?

企業とアーティストをマッチングする作業から始めました。スターフライヤーは黒を基調としたスタイリッシュなデザインが特徴です。そこで「かっこいい、スタイリッシュ」がキーワードになるアーティストとして康本雅子さんを候補に挙げました。康本さんは、自身の作品はもちろんのこと、外部への振付作品やPVなども素敵で、まさに企業のイメージとニーズにフィットしたアーティストだと考えました。

 

その康本さんと、6月にスターフライヤーを視察。社内だけでなく、機内や空港施設、SFJトレーニングセンター(自社訓練施設)など、普段入ることの出来ない場所も見せていただきました。視察をふまえ、まず康本さんから音楽家のオオルタイチさんにイメージを伝えてもらいオリジナル曲を創作。そこに振りを付けて1カ月ほどで創作してもらいました。その後、7月に第一回のワークショップを行いましたが、スターフライヤーはシフト制のため一度に大人数が集まれません。そこでまずは、社内で10名ほどのコアメンバーを募ってもらうことにしました。集まってくれたのは身体を動かすことの好きな社員の方々。キャビンアテンダントさん、グランドスタッフさん、事務職の方など部署も様々でした。その方たちに康本さんの指導でダンスを覚えてもらい、練習用の動画も撮影して他の社員の方々に広めてもらうことにしました。

 

そして8月、わっしょい百万夏まつりの企業パレード当日。事前に劇場の稽古場で2時間ほど練習しての本番となりました。集まった約50人の社員の皆さんは、事前に練習用動画で自主練してきてくださったようで、振りはバッチリ。さすが仕事が出来る人たちだな、という感じでした(笑)。本番もビシッと揃ってかっこよかったです。沿道からも「かっこいい!」という声が聞こえてきて、かなりインパクトがあったと思います。

 

2月には市民を交えての「そらダンをおどろう!ダンスワークショップ」も行われました。一年を通していかがでしたか? 

この事業を通して「スターフライヤーは社員が楽しそうに働いている会社だな」「北九州にはこんな面白いことに取り組む企業があるんだな」ということが伝わり、それが北九州のイメージアップにもなったらいいな、と考えていました。いいものに仕上がった実感を得たのは、PVの配信を行ったくらいからでしょうか。スターフライヤーのFacebookで公開された際、いいね!の数がすごかったり、外部から問い合わせが来たり、それから東京のダンス関係者からも反応がありました。

 

一年通して進める中で、話し合いから生まれた新たな取り組みもあります。クリスマス時季に、スターフライヤーがお客さまにお菓子をプレゼントするイベントをやっているそうで、「その時にダンスを披露できないか?」とご提案いただいたんです。それならいっそ、とPV完成の記者会見と「そらダン」のお披露目をフラッシュモブ形式で行おう、ということになって。こちらも大好評でした。

 

今回のようなプロジェクトが、アーティストにとって、また地域パートナーにとって、さらに劇場にとって、どんな意義を持つと思われましたか?

 

アーティストにとっては、舞台作品を創るという普段の創作活動とは意義もモチベーションも少し異なると思います。これはダンスを踊ることで得られるものを地域に活かすところが重要となるので。康本さんの場合は、まさにダンスで“地域のために”面白いことをしようというモチベーションをお持ちだったので、とてもいい形でこのプロジェクトと結び付いたかなと思います。

 

地域パートナーにとっては、こうした取り組みが社内の課題解決の一助になる、という点が挙げられると思います。今回も、わっしょいのパレード前の練習やPVの撮影を通して、課題であった部署間の交流やコミュニケーションが生まれたと思います。また、外部のアーティストや団体(劇場)と組むことで、外から見た企業の新しいイメージを創って発信することも出来る。芸術文化に取り組む企業としてイメージアップにもなると思います。

 

劇場にとっては、様々な地域パートナーと組むことで、様々な状況における創作のノウハウを蓄積できること、また劇場が持つ創作のノウハウを地域に還元できることが意義だと感じます。今後はせっかく創った「そらダン」というアートレパートリーをいかに市民の方々に浸透させるか、ということに取り組んでいきたいですね。最終的に、劇場があることで、地域の魅力を文化の面からアピールし、北九州っていいな、そんな北九州に住んでてよかったな、と誇りに思う気持ちが一般の人々にも広がっていったらいいな、と思います。

 

 

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