写真家・浅田政志インタビュー

2015年11月29日
LINEで送る

浅田政志

1979年三重県生まれ。2000年日本写真映像専門学校 研究科卒業。2003年東京へ上京。2007年独立。2009年第34回木村伊兵衛写真賞受賞。2010年『Tsu Family Land 浅田政志写真展』(三重県立美術館)著書に『NEW LIFE』(赤々舎)、『家族新聞』(幻冬舎)、『八戸レビュウ』 (美術出版社)、『くまモン、どこいくの?』(飛鳥新社)、『家族写真は「  」である』(亜紀書房)、『卒業写真の宿題』(赤々舎)、『アルバムのチカラ』(赤々舎)などがある。


IMG_6190★(色調整)写真家 浅田政志

 

写真家・浅田政志さんが、市民とともに北九州の日常にあるロケーションを“劇的な”ワンシーンへと変身させるプロジェクトも第4弾となりました。浅田さんにとって、今回の作品づくりはいかがでしたか?

これまで都市モノレールやサッカーの競技場などで撮影させていただきましたが、今回の舞台は門司港。カメラを持って歩くには最高の街だな、と思いました。元料亭の三宜楼では百畳間と言われる大広間で撮影。ここは今まで僕が経験した中では最も広い和室で、建物の設えも本当に素敵でした。旧JR九州ビルでは、普段は入ることの出来ない屋上で。対岸の下関市や夜景を身近に感じられる中での撮影となりました。最後に撮ったのは、JR門司港駅のホーム。夜とはいえ電車のある時間帯だったので、降りる人から「何やってるんだろう?」という視線も感じながらの楽しい撮影でした。

 

今回テーマとなったドラマは、ちょうど撮影時期に北九州芸術劇場でも上演された「ロミオとジュリエット」。来年シェイクスピアが没後400年を迎えることもあり、舞台の主要3シーンをそれぞれの場所で撮影しようということになりました。劇場でお芝居を観劇した人たちが、自分たちの住む街を舞台に「演じて遊ぶ」─そんなストーリーもこめられているんですよね。

そうそう。三宜楼の百畳間ではロミオとジュリエットの出会いのシーンをやって、旧JR九州ビルの屋上では決闘のシーン。門司港駅のホームでは、ロミオもジュリエットも死んでしまうラストシーンを撮影しました。3つのシーンを創ることは劇場の方々と相談して事前に決めていたんですが、実際の構図やポーズなどは現地で参加者の人たちと一緒に創りあげていくカタチで。実は配役も当日、「ロミオをやりたい人?ジュリエットは?」と手を挙げてもらって決めたんです。参加者の方は特に演劇に関わっている人ではないんですが、ポーズはそれぞれ皆さんで考えて演じてもらって。なので「写真を撮られる」というよりも、一枚の写真を一緒にゼロから創りあげていく感じかな。今はデジタルカメラなので、4〜5枚撮っては写真を見ながらみんなで細かいところをチェックして。「どうしたらもっと伝わるか?」─ポーズや配置を変えてみたり、お互い意見を出し合いながらまた撮ってみる。そういう作業を繰り返しました。

 

そうした撮り方は、写真集「浅田家」の頃から変わらないスタイルなのでしょうか?

背景やシーンを演出して撮影するセットアップという手法は、「浅田家」で自分の家族を撮り始めた頃から自分の中ではしっくりきているスタイルですね。このやり方の場合、どういう写真が撮りたいのか、撮影する自分一人で考えるのではなく、写るメンバーたちと一緒に考える。セットアップなので背景の作り込みはある程度はするんですが、シーンの展開やポーズ、構図などはその場での参加者全員と掛け合いしながら決めていくんです。そうすると、撮る人と撮られる人という垣根を越えて、一緒に創っていく仲間という関係性になる。この1枚は、僕が撮ったというよりも、みんなで創った「すごい1枚」になるんです。「プロにいい瞬間を撮ってもらう」という相手まかせではなく、集まったみんなで考えて、何時間もかけて汗かきながら、たった3枚の写真を創りあげる。今はデジカメで誰もが気軽にたくさん写真を撮れる時代ですが、そんな中で今回のような作品はズシッと重く、かけがえのない3枚になったんじゃないかと思います。

 

写真の持つ力、って何なのでしょう?

こういうやり方で撮り終わった後には、何かを一緒に成し遂げた一歩深い関係性になることが多いですよね。短い時間の中なんだけど、写真を創るという体験を通して、そこで交わされていた会話以上にギュッと凝縮された関係性が立ち上るというか。たとえば、「写真集・浅田家」の中では、全員で消防服を着て消防車の前で撮影したことがあるんです。本物の消防士さんに見られながら恥ずかしかった部分もあるんだけど、終わって車で一緒に帰る時は家族の誰もが無言だけど何となく達成感を感じているのが伝わってきたりとか。家族みんなで身体を動かして、時には馬鹿馬鹿しいほどのパフォーマンスをして、いつもの生活の中では味わえないような体験をする。それは、家族の関係性を深めたいからやったわけではないんですが、7年間それを繰り返していくうちに結果的に家族の関係性も変わっていった。当初はまったく意識していなかったことですが、そういう副産物が実感できた時、何か写真以上のものが得られたような気がしました。もし最悪、今その「浅田家」のネガやプリントがすべて無くなってしまったとしても、その関係性は絶対に消えて無くならない。人と人との関係性を活性化したり、変えたりできる「写真」が、自分にとってものすごく意味のある存在になっていったんです。

 

今回のプロジェクトのような作品づくりを通して、浅田さんが特に感じていることは?

たとえば映画や演劇の場合、始まれば終わりまで長い時間演じてないといけないんですが、写真はシャッターを切るほんの100分の1秒とか250分の1秒くらいですからね。ものすごい一瞬だけその役になりきって、それを何回か繰り返せばいいので、演じるという表現経験のない方にとってもハードルが低いんじゃないかと思います。また、参加する人によって全然違う作品になってしまうのも面白いところ。どんな仕上がりになるのか、自分でもまったく読めないくらい未知数。想定外になることが多いので、撮れた写真をホテルに戻って一人で見返している時が僕の密かな楽しみですね(笑)。たとえば、今回のように大きなポスターやチラシを創るなど目標とするゴールがあって、「みんなでいい写真を撮ろうぜ!」と一生懸命になる。ものすごく弾けてみたり、それもみんなで笑いあったり。一期一会、「運命共同体」としての奇跡がそこにはあると思うんですね。そのメンバーじゃないと絶対に創れない写真。その現場と作品に巡り会えた奇跡的な感動、というのかな。

 

今後の展開や目標みたいなものがありましたら…

写真をやってて良かったと思うのは、撮影がなければ行かないような場所に行って、撮影がなければ出会わなかった人たちと出会えること。実はこれは密かな野望なんですが、僕に撮られたことがある人が、日本一多い写真家になりたいんです。「お前も撮られたことあるの?オレも!」みたいな(笑)。そういう点でも今回のようなワークショップはいい機会だと思っています。ここ数年、ワークショップって増えてきてますよね。普段の生活とはちょっと違う感覚が味わえて、新たな自分に出会える場所。日常に楽しみが増えたり、自分の可能性を試してみたり、発見したり。それがワークショップのいいところ。別に写真じゃなくても演劇でもダンスでもよくて、こういうワークショップに参加していろんなことを分かち合える人たちが増えていくと、日本も少しずつ変わっていくんじゃないかな、と思います。北九州でやってみたいのは、工場地帯の夜景での撮影。僕の地元も工場地帯(三重県四日市市)なので親近感があるんですね。もう一つは、最大限の人数で撮ってみたい。これまで北九州では50人くらいでの撮影が最大ですか?たとえば100人以上で撮影したらどんな風に出来るんだろうとか。考えるだけでも楽しくなってきますね。

 

写真作品はこの先50年、100年経った後にもきっと残っていきますね。写真と演劇が交わる作品が、また一つこの街で生まれたことは劇場にとっても嬉しいところです。これからの可能性も楽しみにしています。ありがとうございました。

 

『ドラマチックロケーション』

浅田政志氏と北九州芸術劇場では、平成27年度の北九州舞台芸術フェスティバル「北九州芸術工業地帯」(旧:北九州演劇フェスティバル)のメインビジュアルを「市民」と作るプロジェクト『ドラマチックロケーション』を平成24年度より実施。北九州のロケーションを舞台に見立て、市民がドラマのあるシーンを演じ、浅田氏が撮影。「演劇」と「写真」を越境する企画として、これまでに多くのドラマチックな北九州ならではの写真作品を残してきた。

 

平成24年度 北九州芸術劇場(大ホール)にて「ドラマチック!!オーディエンス!」

平成24年度 京町銀天街(路上・店舗・歯科医院)にて「ドラマチック!!商店街!」

平成25年度 北九州モノレール内にて「ドラマチック!!モノレール!」

平成26年度 門司陸上競技場にて「ドラマチック!!キックオフ!」

平成27年度 門司港(三宜楼・旧JR九州ビル・門司港駅)にて「ドラマチックロケーション@門司港!」

 

———————– 

平成27年度北九州舞台芸術フェスティバル『北九州芸術工業地帯』×門司港「揺らぎ」の芸術祭
「写真家、浅田政志とつくるドラマチックロケーション!@門司港」写真展

日程:2015年9月19日(土)〜11月29日(日)

会場:JR門司港駅構内(北九州市門司区西海岸1丁目5-31)

 

日程:2016年2月8日(土)〜11月29日(日)

会場:リバーウォーク北九州5階アートライブラリー

 

 

 

この記事に関連する他の記事